まいまいげっとさま@Die Schloss〜幻桜城より

相互記念にSSを一本プレゼントしましょう!とのありがたいお言葉に甘えてリクエストさせていただきました!
ファイアーエムブレムシリーズから「蒼炎の軌跡」が舞台になっています。
マイベストキャラのティバーン様も登場する、とっても楽しいコメディーです♪
裏テーマはきっと「比較文化人類学」ですよっ!!あまりの見事さにやられた〜って感じです(^^)v
まいまいげっとさま、本当にありがとうございました!

■ Lunch with Prince

…ほかほかと湯気を立てて、目の前のスープ皿から美味しそうな匂いが漂ってくる。
「王子は、肉類がだめでしたね。ですからこちらで」
「ああ、すまない」
傭兵団の胃袋の調子を一手に引き受けているらしいオスカーが、リュシオンへ話し掛けながら、パンとサラダをさらにその前へ置いた。
「フォークとナイフの使い方、分かりますよね…あ、すみません」
隣へちゃっかり座っているミストが、そう言ってぺこりと頭を下げる。
「まあ…分かることは分かる」
「レテみたいに、ナイフをぐっさり刺してそのまま口へ、なんてこと、しないよな?」
「ボーレ! 失礼だよ」
彼の真向かいに座っている兄弟も、心配して(おそらく)話し掛けてきてくれる。
「頑張って疲れてるんだ。しっかり食ってくれよ。オスカーの料理は絶品だ」
「ああ」
シノンと言う弓使いもまた、彼なりに精一杯気を使ってくれているのだろう、フルーツ盛りだくさんの皿を目の前に移動させてくれたりしている。
だが、
(…ちょっと疲れたな)
グレイル傭兵団のメンバーは、皆、気さくでいいベオクばかりだ。
だから人一倍繊細(なつもり)な自分も、すぐになじむことが出来た。
でもそれでも、やはり白鷺王子、リュシオンは、ピカピカ光るナイフとフォークを目の前にして、こそっとため息をつく。
(とりあえず、ベオクの食事の仕方くらいは知っているんだが)
セリノスの森へ遊びにきていたベオクたちの食事の仕方を、遠目で見たこともある彼。
思わずため息をついてふと気づけば、皆が自分へ視線を注いでいて、
「…」
一瞬の沈黙の後、皆は慌てて自分の食事へ没頭するふりをした。
(…器用なものだな、ベオクとは)
それを見ていて、リュシオンは再び考える。すると、
「あの…お口に合わなさそうですか?」
いつまで経っても手をつけようとしない彼へ、オスカーがおそるおそる尋ねてきた。


「い、いや、そんなことはない、ただ」
「まだ慣れないんだろ?」
慌てて首を振る彼をフォローするように、アイクが口を挟む。
「気にするな。あんたはあんたの食いやすいように食えばいいんだ、な?」
…習慣の違いもあるだろうし、と、アイクは言いながら、ちらりと横目で
レテを見やる…ナイフ一本ででかい肉を裁き、ぐさりと突き刺しざま、自分の口へ無造作に放り込む彼女を。
「そ、そうか。では」
でも、それでも白鷺王子はホッとしたような声で言い、やおら立ち上がって
足に履いていた白いブーツを両足とも脱ぎ去ったのである。
一体何をするのだろう。そう思いながらつい、全員が彼の行動へ目を吸い寄せられていると、さらに彼はテーブルの上へ乗り、
「「「「……」」」
レテを除く全員が口をぽかんと開けた様子に怖気づくことなく、
なんと片足の指を器用に使い、それでパンを挟んだ。

そしてそのまま、
「…美味い。絶品だ」
柔らかい体を曲げ、そのパンへ口をつけて食いちぎる。
「…」
見ていたアイクの口から、ぽろりとパンの欠片がテーブルの上へ零れた。
「…ん? 何かおかしいか? いつも我々はこうやって食事をとるのだが」
全員が自分の行動へ視線を注いでいるのへ、我知らず鋭い目を向け、白鷺王子は言った。
「…いや…おかしくは、ない、と…思う。ま、とにかく食え。
どんな食い方でも腹にたまりゃ、皆一緒だ
アイクが言うと、
「違うよっ!」
ミストがほとんど絶叫といっていいほどの声を上げる。
「こんな綺麗な王子様が、こんな食べ方…。
ダメだって! ほとんど暴力だよ! 私がベオクの姿でいるときの食事のマナー、ちゃんと教えてあげるから!」




で、その3日後。
「よう、リュシオン、元気か?…って、お前、ちょっとやつれたんじゃないか?」
「…ティバーン…」
鷹王が、ちょうど食事時に傭兵団を訪ねてきた。早速彼の好物の肉の塊がテーブルの上へ出されたのを見て、ティバーンが目を細めながらリュシオンの隣の席へ着くと、
「…ちょっと…疲れました」
「おいおい、アイク。お前、こいつをこき使ってんのか?」
「いや、そんなつもりはないんだが」
時ならぬ賓客を迎え、アイク以外のメンバーは恐縮しながらも鷹王へ酒を勧めたり、彼の好物を並べたりと歓待をつくしている。
「ベオクの食事のマナーを学んでいるところで」
「ほう?」
ちょっと憔悴したリュシオンを挟んだその隣では、ミストがにこにこしながら2人の会話へ耳を傾けている。
「そりゃいいことだ。文化の違いを学ぶってのも、大切なことだからな、っと」
そこで、鷹王もまた深く頷き、両足のブーツを脱いだのである。



「…鳥だからな、なんだかんだ言っても」
「ちょっとはベオクの食事の仕方、覚えてくれてたのに」
やっぱり鷹王につられて、以前の食事の仕方に戻ってしまった白鷺王子を見ながら、アイクとミストはため息をついた。
「ま、何にせよ、食欲があって元気ならそれでいいんだがな」
「でも!」
「いいじゃないか、腹にたまれば」
そんな2人を眺めながら、レテが言う。



「お前らも一度、我々のマネをしてみたらいい。
結構爽快だぞ」




(その時だけ、化身されてもねえ…)
「スープを飲む時不便だから、壷みたいな形の容器へ注いでくれれば」などとオスカーへ注文をつけるリュシオンを見て、そして実際化身したリュシオンとティバーンを見て、2人は思った。
…いっそのこと、食事の時は最初から化身しておいて
もらったほうがいいかも。




FIN〜〜

■ 著者まいまいげっとさまの後書き

「FF−HOLIC」様との相互記念にリクエストを頂きました。
『仲間になったリュシオンが(色んな意味で)気になって仕方が無い傭兵団のメンバー。戦闘で疲れたリュシオンにアレコレと話しかけるが、リュシオンの世間知らず&天然&常識の相違などがネックで、上手くコミュニケーションがとれない。皆に取り囲まれて困惑し、余計に疲れたリュシオンをティバーンがレスキュー。とんちんかんな受け答えを楽しめるようなお話に。』
とのことだったんですが、ティバーン様のおかげで、余計になんだかあさってなSSになったような気が…。
でもって、やっぱり常識の相違ってのは、食事に一番良く現れると思うんですね。
お楽しみいただけましたら幸いです…うう(涙)。