キリリクでSSを書いてくださいました!今回はFinal Fantasy VI からフィガロの双子でお願いいたしました。
男の子同士の双子って、こんな感じなんじゃないかしら…というのが凄く楽しいお話です♪
まいまいげっとさま、本当にありがとうございました!
「問題は、だね」
…今、外では、彼ら以外のほかのメンバーがまさに血の汗を流してダンジョンの探検をしているに違いない。
なのに、
「アニキ、たまには歯ぁ磨け。息、臭ぇ」
「だまらっしゃい。今はそういう問題ではない」
おんなじ顔が、飛空挺の片隅でこの上なく互いのデコをぴったんこにくっつけている図は、なんともムサい平和的なものであった。
「問題は、だ。彼女が果たしてその白く小さな胸の中に、我々のどちらを思っているか、ということだよ、違うかいブラザー」
「あ、ああ…そう言われてみれば」
「だから…君が告白してみて、振られたらハッキリするんだよ」
「ふざけんてんのかてめえ」
…世界がさらに破滅の危機に瀕しているというのに、この双子は一体、何をやっているんだろう。第一、ティナが彼ら二人のどちらかを必ず思っているなんて、誰が決めたのさ…と、リルムがその場でいつもの通り、彼らのアホな姿をスケッチしていたら突っ込んでいたに違いない。
「ま、それは冗談として、だ」
「冗談に聞こえねえよ」
その騒ぎ(?)の間も、肝心のティナはどこ吹く風、
「さーて、今度は絵本でも読みましょうか? どれがいい?」
人間の姿に戻って、子供達の相手をしている。
「彼女の気持ちは、いずれ確かめなければならない、だろう?」
「お、おう」
ま、いつもふざけてはいるが、兄は間違ったことは言わない。
だもので、マッシュは素直に頷いて、エドガーを見守った。
「で、やはりそれを確かめるには、ストレートに聞いてみないと駄目だと僕は思うんだよ。
だって彼女は天然だからね」
「そうだな」
あんたがたは本当にティナのことを好きなんかい?と、リルムがその場に(以下略)。
「と、いうわけで」
エドガーは、そこでごそごそと自分の服の胸ポケットを探り、コインを一枚取り出した。
「あの時と同じように決めよう。表か裏か? 外れたほうが、彼女に『誰を思っているのか』を尋ねる。どうだい? お前が裏だ」
「…いいけどよ…そのコイン、ちと見せろ」
「何だい、ブラザー。僕のコインが信用できないとでも? あ、こら!やめないか!」
「逃げんな、それ、いっぺん寄越せ!」
…ちょっと狭い飛空挺の中で、時ならぬ兄弟喧嘩+鬼ごっこが始まった。
「埃あげんな! 誰が掃除すると思ってんだ!」
操縦室にいたセッツァーが、騒ぎを聞きつけてやってきて、
「誰も掃除しないんだから、騒ぐな!」
叫んだが、もちろんアホな兄弟の耳には入らない。
「セッツァー、そろそろ他の皆が帰ってくる頃じゃない?」
その「どたばた」を気にもかけず、ティナはのんびりと彼に話し掛けてくる。
「お腹とか空いてるだろうし、私、御飯の用意でも」
と、彼女が言いかけると、
「よう、待たせたな、ティナ」
「ロック! お帰りなさい。お腹空いてる? すぐ御飯、作るね」
そこへちょうど帰ってきたらしいトレジャーハンターが、ティナを見て嬉しそうに声を上げた。
「そりゃいい、ティナのメシかー。あ、俺も手伝うよ」
「わ、嬉しい」
そんな風に言い合いながら、二人はコックピット近くのキッチンへ去っていく。
そして一方では、
「いやった! コイン獲得…ってー、コラこのクソアニキ!」
エドガーに馬乗りになって、マッシュが勝利の雄たけびを上げた。
「やっぱり両表のコインじゃねえか!」
「ぐ、ぐう…マ、マッシュ…お前、重い…退いてくれ」
エドガーはエドガーで、弟が床へぎゅうぎゅう押し付けるので、瀕死のうめき声をあげている。
「セコいぞ、てめえ」
しぶしぶその上から退いて、マッシュが助け起こしてやると、
「…何を言ってるんだね」
咳き込みながらもエドガーは、
「自分が勝つための布石を敷いてこその勝負だよ」
と、減らず口を叩いたのである。
「だー! だからもう、いい加減やめろっての!」
またしても取っ組み合いになりかけた二人。たまりかねてセッツァーが割って入り、それぞれの頭をむんずと鷲掴みにして、やっとこさ引き分ける。
「アンタらのお目当てのお嬢さんなら、いましがた泥棒に連れてかれたっての。ちったぁ目を覚ませ、現実を見ろ」
「はい、ここ、置いておくからねー。食べたら持ってきてね」
…飛空挺から眺める夕日は美しい。
どこか遠くから、波の音を風が運んできているようで、
「…ふふふ」
「ははははは…」
その風は、失恋した二人の頬を優しく撫でていく。
ティナが持ってきてくれた晩御飯を脇へうっちゃったまま、フィガロの双子は、時折互いを見やって微笑しながら、熱い涙を流していたそうな。
FIN〜
…すみません「魅力的かつ激しく」のところが、「ひたすら的ただ単に激しくアホ」になりました…。
リクエスト、ありがとうございました…ううう。(2007年9月28日謹製)